障害者スポーツボランティアとは

2025.03.19公開
「誰かと一緒に何かをする」ことがスポーツの醍醐味だと感じます
増田 眞美子さん

 障害者スポーツボランティアにご興味のある方に向けて、実際の活動事例を交えながらその魅力をお伝えします。

 今回お話を伺ったのは、プレーヤーとして活動する一方で、ボランティアや「ぴあサポーター(※1)」としても積極的に活動されている増田 眞美子(ますだ まみこ)さんです。障害がありながら障害者スポーツとそのボランティアの魅力を発信されている増田さんに、活動を始めたきっかけや得た学び、今後の目標についてお話を伺いました。

※1:障害のある人のスポーツ参加を支援するボランティア。障害当事者がぴあサポーターとして、自らのスポーツ体験を共有しながら障害のある人と交流することで、継続的なスポーツ参加へのきっかけを作ることを目的としている。

ボランティアを始めたきっかけを教えてください。

 若い頃に発症したリウマチの影響で、外出時は車いすになりました。車いすを押してもらったり、買い物で手の届かないものを取っていただいたり、本当に色々な場面で周りの人に助けられることが多く、その度に「自分も人の役に立つことを見つけたい」と強く思うようになりました。

 そんな時に、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」のボランティア募集が目に留まり、「私にもできることがあるかもしれない」と思い、勇気を出してフィールドキャスト(大会ボランティア)に応募することにしました。

 それが、ボランティアを始める最初の一歩となり、今につながっています。

「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」のボランティアをとおして新たに学んだことや発見はありましたか?

 ボランティアをしてみて感じたことは、人と人とのつながりの大切さです。誰かの行動が他の人の喜びになり、その喜びがさらに周囲を明るくするという連鎖を、ボランティアを通じて実感することができました。

 また、自分に障害があるからこそ気付ける小さな工夫や配慮が、他の人にとって大きな助けになるかもしれないことも、ボランティアで得た学びの一つです。例えば、選手村でタオルを渡す時に、片手しか使えない選手が運びやすいようビニール袋に入れて口を結び腕にかけてあげたのですが、他のボランティアの方から「それは思いつかなかった」と言われて、とても感謝されたんです。障害があるからこそ気付いた工夫が人の役に立つことがあるんだと実感した瞬間でした。

 このような経験は、家族だけではなく、色々な人と関わらないと得られないものだと思います。

ボランティアを通じて、どのような時にやりがいを感じますか?

 人の笑顔を見る瞬間と、感謝の言葉に触れた時ですね。その時間が、何よりもご褒美に感じています。例えば、参加者が「楽しかった」「またやりたい」と言ってくれた時、笑顔を見れた時、「ここに来て良かったな」と心から思えます。

 ボランティアを通じて人と人とのつながりを深めることで、社会の一員として役立つことの喜びを感じることができ、こうした経験が私にとって大きなやりがいにつながっています。

ボランティアだけでなく、プレーヤーとしてもボッチャなどを楽しまれていますが、もともとスポーツに関心があったのですか?

 学生の頃はバドミントン部に入っていました。社会人になってからもスキーや卓球など、色々なスポーツを楽しんでいました。ただ、リウマチが悪化して体が動かなくなるにつれて、そうしたスポーツはできなくなってしまいました。

 でも、スポーツをする楽しさが忘れられず、息子たちがサッカーや卓球をやっている姿を見る度に、「私も一緒にやりたい」と思う気持ちが沸々と湧いてきました。そんな時に、「東京都パラスポーツ次世代選手発掘プログラム(※2)」という事業を知り、これをきっかけに出会ったのが、ボッチャやビームライフルでした。

 特にボッチャは、障害があっても自分のペースで楽しめて、戦略性もあり、すごく面白いスポーツです。最近では、カーリングによく似たカーレットというスポーツにも挑戦中です。

 プレーヤーとして競技に参加することで、スポーツが持つ魅力を再確認し、今でも様々な障害者スポーツにチャレンジしながら楽しんでいます。

※2:「東京都パラスポーツ次世代選手発掘プログラム」の詳細はこちら

ご自身が感じている障害者スポーツの楽しさ、魅力とは何ですか?

 一番の魅力は、その人に合った形で楽しめることですね。障害があっても、ルールや用具を工夫することで、その人ができる範囲で楽しめるのが素晴らしいと思います。

 例えばビームライフルは、ライフルをスタンドに置いて、指だけで操作することができるので、体が不自由でも取り組むことができ、スコアが出る度に達成感があります。一方で、ボッチャやカーレットのようなターゲット競技は、ルールがシンプルで、誰でもすぐに楽しむことができ、戦略を考えたりチームで連携したりする楽しさもあって、本当にスポーツの奥深さを感じます。

 また、障害者スポーツをとおして人とつながれるのも大きな魅力の一つです。個人競技でも団体競技でも、みんなで目標に向かって頑張ることで絆が生まれます。家にこもっている時とは全く違う世界がそこにはあって、「誰かと一緒に何かをする」ことがスポーツの醍醐味だと感じます。

 スポーツをしていると、「もうちょっとやってみよう」と前向きになれるのも、大きな魅力だと思います。

TOKYO 障スポ&サポート ぴあサポーターとして活動してみていかがですか?

 ぴあサポーターとしての活動を通じて、本当に色々なことを感じています。特に、障害のある人と一緒に障害者スポーツを「楽しむ」ことによって、お互いに学びや気付きがあると実感しました。

 また、活動中に特に意識したのは、相手がリラックスして楽しめる雰囲気を作ることです。最初から積極的に話しかけるのではなく、笑顔で挨拶することや、自然に話しやすい空気にすることを心掛けました。小さなお子さんの場合、直接話すのが難しい時はご家族と話をしながら、子どもが入りやすい雰囲気を作るようにしています。こういったコミュニケーションの工夫は、ぴあサポーターの活動を通じて学んだ大事なことの一つです。

今後はどのようなボランティアに携わりたいですか?

 これからも様々な障害者スポーツを知って、障害者スポーツをメインに活動したいです。また、これから東京で開催される世界大会や、「東京2025デフリンピック」のような国際的なイベントのボランティアにも参加したいと思っています。そのために、英会話や手話を少しずつ勉強しています。その甲斐もあって、ビームライフルの大会で知り合った聴覚障害の選手に手話で挨拶をすることができました。

 せっかく活動をするなら、自分自身の成長につなげていくことが大切だと思っています。ボランティアを通じて新しい挑戦をしながら、これからも笑顔や喜びが生まれる場に関わり続けたいです。

これから障害者スポーツのボランティアに参加を考えている方々へのメッセージをお願いします。

 「障害者スポーツやボランティアに興味があるけど」と、不安を感じている方もいらっしゃると思います。でも、まずは一歩踏み出してみてください。私自身も最初は「自分にできることなんてあるのかな」と不安でした。でも、実際に参加してみると、できない部分は周りの方がサポートしてくれたり、逆に私だから気付けることがあったりして、とてもやりがいを感じられます。特に、参加者の笑顔を見た時の喜びは言葉にできないほどです。

 最初の一歩は勇気がいるかもしれませんが、その一歩が新しい経験や感動につながるはずです。できないことがあっても大丈夫です。できることを少しずつ積み重ねていけば、それがきっと大きな力になります。ぜひ、あなたも一緒に障害者スポーツやボランティアを楽しんでみませんか?

【インタビューを終えて】

 障害と向き合いながら新たな挑戦に取り組む姿勢や、障害者スポーツやボランティアを通じて社会に貢献しようとする熱意が伝わってきました。特に、リウマチによる障害を抱えながらも、「できないこと」ではなく「できること」に目を向け、積極的に活動されている姿にとても感銘を受けました。

 今回のインタビューを通じて、「少しでも誰かの一歩を後押しできたら嬉しい」と語ってくれた増田さん。その穏やかな笑顔と前向きな姿勢は、話を聞いている私たちにも元気を与えてくれました。これからも、スポーツやボランティアを通じて、多くの人々に勇気と喜びを届けてくれることでしょう。