障害者スポーツボランティアとは

2025.02.20公開
ボランティアを通じて色々な人と知り合いたい。そして障害についての理解を深め、広げたい
政榮 結さん

 障害者スポーツボランティアにご興味のある方に向けて、実際の活動事例を交えながらその魅力をお伝えします。

 今回お話を伺ったのは、高校に通う傍ら、積極的にボランティアへ参加している政榮 結(まさえい ゆい)さん。今回は、クラスメイトと協力して取り組んだボランティア団体の運営や、障害者スポーツを学ぶためのイギリス留学など、様々な体験を通じて得られた学びや気付きについてお聞きしました。

ボランティアを始めたきっかけを教えてください。

 中学生の頃からボランティアに興味はあったのですが、年齢的に参加することができず、高校生になって初めて、所沢の放課後等デイサービスでのボランティアに参加しました。障害のある子どもたちと遊んだり、職員の方のお手伝いをしたりする中で障害へのイメージが大きく変わり、障害について「もっと知りたい」「皆さんにも知ってもらいたい」と感じるようになりました。そのことがきっかけで、放課後等デイサービスを中心にボランティアへ参加するようになりました。

それからどのようなボランティアをしましたか?

 高校1年生の3月頃、ボランティアに関心があるクラスメイトに声をかけて、10名ほどで「ハピスポ」という団体を設立しました。

 私は小学2年生から中学卒業までの8年間、バスケットボールをしていたのですが、小学生の時に障害のある子とミニバスケットボールをする機会があり、最初はうまく話せなかった子とも、一緒にプレーすることでとても親しく話せるようになったのが今でも強く印象に残っています。その経験から、障害について理解を深める方法や交流の場として「スポーツ」が役立つのではないかと考えていたので、ハピスポではスポーツを通じた活動を行いたいと設立前から決めていました。

 そして、障害に対してまだ先入観や偏見がない子どもたちに、自身の体験を通じて障害について捉えてほしいと思い、障害の有無を問わず全ての子どもを対象としました。

 実際は、スポーツ活動の実施には至りませんでしたが、学童保育に通う子どもたちと「障害」や「障害者スポーツ」に関するかるたを作って、そのかるたで楽しむイベントを開催することで、間接的にスポーツへ触れてもらうことができました。

障害者スポーツにはどのように関わっていったのですか?

 2024年の夏に、文部科学省主催の留学プログラムを活用してイギリスへ留学をすることにしました。応募の時点で留学のテーマを決める必要があり、日ごろから突き詰めてみたいと思っていた「障害者スポーツ」をテーマにすることにしました。しかし、その時の私は障害者スポーツについて全く知識がなかったため、「障害者スポーツのことを知りたい、学びたい」と思い、インターネットで見つけた「TOKYO 障スポ&サポート ボランティア講習会」に参加し、その講習会で初めて障害者スポーツに触れました。

TOKYO 障スポ&サポート ボランティア講習会に参加してみていかがでしたか?

 率直にすごく楽しかったです。講習会では講義の他に、バスケットボール用車いすや視覚障害のある人の誘導、ふうせんバレーなどの実技も体験できました。参加者は年上の人が多かったのですが、同じグループだった人と連絡先を交換して、講習会後も「こんなボランティアに参加したよ」と連絡をとっています。こうした情報交換やボランティアに対する考えなどを共有できる出会いは素敵だと思いました。

障害者スポーツの起源であるイギリスに留学をして、印象に残っていることは何ですか?

 障害や障害者スポーツに関するアンケートを日本とイギリスで行いました。英語は得意ではありませんが、イギリスでは公園にいる人に声をかけて、回答してもらいました。

 そのアンケート結果で興味深かったのは、「障害と聞いて思い浮かべる言葉」という質問に対して、どちらの国でも「サポートが必要」という回答があったのですが、そのニュアンスに違いがあったことです。日本では「かわいそう、大変だからサポートが必要」と答えた人が多かったのですが、イギリスでは「サポートは必要だけど、とてもパワフル」といったポジティブな回答が多かったです。「スーパーマン」と答えたイギリスの人もいて、とても驚きました。

 イギリスは障害のある子とない子が一緒に教育を受けるインクルーシブ教育が進んでいるので、そうした環境が子どもの頃からの障害に対する考え方にも影響しているのだろうと思いました。

イギリスで障害者スポーツの現場を体験しましたか?

 障害のある子とない子が一緒に空手をしている団体や、ボッチャや車いすバスケットボールの競技団体などへ見学に行きました。ボッチャチームの中には、パラリンピック選手も在籍していました。どの現場でも、皆さんの笑顔がキラキラ輝いていたことがとても印象的でした。

 今考えると、イギリスへ行く前は、少なからず障害者スポーツに対してネガティブなイメージも持っていたように思います。しかし、実際に障害者スポーツの現場に関わってみると、プレーヤーの皆さんは、私がバスケットボールをプレーしている時と変わらず、「みんな同じだ」と思いました。当然のことですが、それが一番の気付きでした。

今後、参加してみたいボランティアはありますか?

 これまで参加していた放課後等デイサービスでのボランティアに加えて、ボランティア講習会やイギリス留学での経験などを活かして、障害者スポーツを広める活動にもボランティアとして参加してみたいと考えています。ただ、このようなボランティアに関する情報を自分だけで探すには限界があるため、TOKYO 障スポ&サポートのメールマガジンが情報収集にとても役立っています。定期的に活動している団体の情報も掲載されているので、興味のある団体の活動に参加して、色々な人たちとつながりたいです。

 そして今後は、自分でも障害のある人のスポーツをサポートする活動や団体を企画・運営したいと思っているので、もし興味のある人がいれば「一緒にやろう!」と言いたいです。

ボランティアに興味がある同世代の人に対してメッセージはありますか?

 私の周りにも、ボランティアに参加したいけど、コミュニケーションが苦手でなかなか行動に移せないという人がいます。でも、ボランティアを募集している団体の方は、初めて参加する方の受入れやコミュニケーションに慣れているので、「安心して飛び込んじゃって大丈夫だよ!」と伝えたいです。ボランティアに参加することで自分の居場所が広がると、毎日がもっと楽しくなるかもと伝えたいです。

【インタビューを終えて】

 終始笑顔でハキハキと質問に答える姿からは、「色々な人と関わりたい」「一緒に活動したい」という前向きな思いがひしひしと伝わってきました。ボランティアの現場は「家」「学校」と並んで心の拠り所となる「第3の居場所」だと語る政榮さん。初級パラスポーツ指導員の資格取得にも興味があるそうです。将来は障害の有無や年齢に関係なく、笑顔あふれる交流の場を作り上げてくれることでしょう。