障害者スポーツボランティアとは

2022.11.14公開
車いすに乗った女の子の表情に衝撃。障害のある人を支えたいと強く思いました
赤澤 謙介さん

 ボランティア活動にご興味のある方に向けて、障害者スポーツ事業の事例を交えながらボランティア活動の魅力をお伝えします。

 今回お話を伺ったのは、これからボランティア活動を始めるという意欲満々な赤澤謙介(あかざわ けんすけ)さん。中学時代は砲丸投げの選手として東京都2位、高校時代は円盤投げで関東7位に。さらに、大学時代は日本体育大学のアメリカンフットボール部に所属し、関東学生アメリカンフットボール連盟の1部リーグで活躍するなど、アスリート人生を歩んできた赤澤さんに、障害者スポーツに興味を持ったきっかけや、これから取り組んでみたいことなどを聞きました。

学生時代はかなり本格的にスポーツに取り組まれていましたが、赤澤さんが考えるスポーツの魅力はどんなところですか?

 様々な個性をもった人たちが、一つの目標に向かって進み、その過程で仲良くなっていくところではないでしょうか。これが本格的な競技になると仲良しというだけではやっていけないと思いますが、互いに切磋琢磨しながらその過程が連帯感を育むという意味では一緒だと思います。

障害者スポーツにも興味を持つようになったのはなぜですか?

 興味を持ったきっかけは、東京2020パラリンピック競技大会でした。テレビで表彰式を見ていたら、メダリストの方の表情がすごく輝いていて印象的だったんです。同時に、ここまで来るのにいろいろな苦労があったことも想像でき、私にはオリンピックのメダリストの方たちの表情よりも輝いて見えました。

そこで自分も障害者スポーツに携わってみたいと思ったのですね。

 実は、携わりたいとまで思うようになったのは、その後に起きた別の出来事がきっかけです。ある駅のホームで車いすに乗った幼い女の子を見かけたのですが、とても暗いというか申し訳なさそうな表情をしていていたんです。なぜそんな表情だったのかは分からないですが、電車に乗るためには駅員の方をはじめ色々な人の協力を得なければいけないので、負い目を感じていたのかもしれませんね。パラリンピックで見た競技者の笑顔とはあまりにも落差があって、ものすごい衝撃を受けました。そこで、厚かましいことは重々承知ですが、彼女のように困っている障害のある人を支えたい、できれば自分が得意なスポーツで笑顔を増やしたいと強く思うようになりました。

それでボランティア活動を始めようと決意されたのですね。

 そうですね。ただ、ボランティアの活動先を探してみると、スケジュールの合うものがなかなか見つからなくて。そこで、ボランティア活動に参加するより先に、TOKYO 障スポ&サポートの講習会に参加しました。

講習会はいかがでした? 学ぶことはありましたか?

 はい。いろいろ学ばせていただきました。例えば、目隠しをして歩いてみたのですが、真っ暗な世界を体験して、情報の大部分を目に頼っていることを痛感しました。あと、競技用の車いすにも乗せてもらいました。最初は楽しかったのですが、バスケットボールなどで選手同士がぶつかり合う場面を想像すると恐ろしくなってきて。それをやってのける選手の方々のすごさがわかりましたね。

講習会の後は、日常生活に変化はありましたか?

 障害のある人の存在に気づきやすくなりました。あと、車いすの背もたれの高さを見て障害の度合いを確認するなど、より細かく見るようになりました。これは、講習会で障害に関する様々な知識を得たことが影響していると思います。その結果、障害のある人に寄り添いたいという気持ちもさらに強くなりました。

ボランティア活動でやってみたいことはありますか?

 今のところ未経験なのでどんなことにも挑戦したいのですが、欲を言えば、自分のスポーツ経験を生かせたらいいなと思っています。いずれは指導する立場になってみたいという思いもありますが、障害のある人の身体の動かし方やメンタルケアの方法などは私たち障害のない人とは大きく異なると思うので、まずは何事も勉強という気持ちで色々なボランティア活動に携わっていきたいです。スポーツに限らず、障害のある人をサポートできるのであればどんなイベントでも参加してみたいですね。

ボランティアに応募しようかどうか迷っている人がいたら、どのように声をかけますか?

 やってみたい気持ちが少しでもあれば、迷わずに行動してほしいと思います。やれるかどうかは、やってみて判断すればいいかなと。このことに関して、私自身すごく後悔していることがあります。それは、企業スポーツでの就職が決まっていたのに、怪我を理由に自分から辞退してしまったこと。冷静に考えると、怪我を克服してそのまま選手になれたかもしれないのに、自分でその可能性を潰してしまった。やってもいないのに、「できない」という思いにとらわれていたんですね。その反省もあって、今の自分のモットーは「まずはやってみる」です。ボランティア活動に対してもそれを心がけています。

ボランティア活動への入口としてTOKYO障スポ&サポートを選んだ理由を教えてください。

 ボランティアをどうやって始めていいかわからなかった時、こちらのサイトがあらゆる情報を分かりやすく提示していたので登録させていただきました。E-learningも分かりやすくて、ボランティア活動に関する基本的な知識を得ることができました。

E-learningや講習会で学んだことを早く生かせるといいですね。

 そうですね。講習会には障害者スポーツの経験がない方や、自分のようにボランティア自体が初めてという方など色々な方が参加されていましたが、皆さんとてもフレンドリーで、居心地が良かったですね。あと、障害のある人とも話すことができたのですが、話し方や考え方などは、私たち障害のない人と何ら変わらないのだと感じました。駅で見かけた女の子の暗い表情が心に強く残っていたので、いい意味で先入観を覆されましたね。こういった体験のおかげで、自分もやっていけると確信できました。

障害のある人と一緒にスポーツするのも楽しいでしょうね。

 やってみたい気持ちはあるのですが、当分は遠慮します(笑)。これは私の悪い癖なのですが、プレイヤー側になるとかつてのアスリート魂が復活して、競技をとことん究めたくなってしまうんですね。そうなると楽しむことからは遠ざかってしまうので、まずはサポートという立場に徹してボランティア活動を心から楽しみたいと思います。

【インタビューを終えて】

 社会人になって6年くらいは競技人生に心残りがあり、モヤモヤしていたという赤澤さん。ふっきれたきっかけは、あの車いすに乗った女の子との出会いだったそうです。赤澤さんにとっては6年間のモヤモヤを一気に吹き飛ばすくらいの衝撃だったそうで、その後はアスリートとして表舞台に立つのではなく、裏方として競技を支えていこうという気持ちに完全に切り替わったのだとか。興味があることは究めたくなるとのことですから、将来はパラリンピックのような大舞台で、指導者として立っている赤澤さんを目にするかもしれませんね。