障害者スポーツボランティアとは

2022.10.20公開
構えなくても大丈夫。参加しようかどうか迷っている時間がもったいないです
趙 理沙さん

 ボランティア活動にご興味のある方に向けて、障害者スポーツ事業の事例を交えながらボランティア活動の魅力をお伝えします。

 今回お話を伺ったのは、スポーツが大好きで、障害者スポーツのイベントにも積極的に参加されている趙 理沙(ちょう りさ)さん。ボランティア経験も豊富な趙さんに、ボランティアを始めたきっかけや、障害者スポーツの魅力などを語っていただきました。

ボランティア活動を始めたきっかけを教えてください。

 2009年に、山道を2日間で100km歩くというチャリティイベントにボランティアとして参加したのがきっかけでした。その時は友人たちと一緒に参加し、タイム計測やコース誘導、給水補助などを担当したのですが、それが私にとってとても良い経験だったんです。参加者が頑張っている姿に感銘を受けましたし、海外からの参加者とのコミュニケーションもすごく楽しめました。そこでボランティアにはまり、同じイベントに4年連続で参加しました。

最初からスポーツイベントでボランティアをされたのですね。

 はい。スポーツ全般が好きというのもありますが、私は自分が前に出るより裏方として頑張っている人をサポートするのが好きなんですね。そのチャリティイベントも世界の貧困地域への援助資金集めという目的があって、参加者の皆さんの熱意がすごく伝わってきました。ですから、私の中ではボランティアというより「サポート」という感覚でした。

障害者スポーツのボランティアにも参加されていますが、元々関心があったのですか?

 そうですね。ただ、自分の中では障害の「ある」「ない」という分け方をしていなくて、たとえばゴールボールもブラインドサッカーも私にとっては数あるスポーツ種目の一つなのです。スポーツ好きとしては新しい種目にどんどんチャレンジしたくなるので、その流れで参加を申し込みました。運よく2019年の「チャレスポ!TOKYO」にボランティア参加できたのですが、それが初めて障害者スポーツに触れた経験だったと思います。その時は、電動車椅子サッカーの会場で参加者を誘導したり、ボール拾いをしました。

障害者スポーツに触れてみてどう思いました?

 スポーツとして純粋に面白いなと思いました。その後、東京2020パラリンピック競技大会のパラ水泳競技でフィールドキャストをさせていただいたのですが、選手の皆さんを間近で見てとても感銘を受けました。皆さん、自由に動かすことができる限られた部位を、工夫して極限まで高めていらっしゃるのがすごく伝わってきて。障害者スポーツの場合は、それぞれ試行錯誤して勝負に挑むわけで、その難しさとそれを乗り越えたすごさが直に伝わってきて胸を打たれました。

「TOKYO 障スポ&サポート ボランティア講習会」にも参加されましたね?

 はい。講習会では目隠しして歩いたり、身体の一部を動かせないようにしてプレーしたりと、障害を疑似体験することができました。思っていた以上に不自由で恐怖を感じたのですが、講習会に出席されていた障害のある人とお話ししたら、「これが自分たちの世界。これが普通なんだよ」と言われて考えが変わりました。それまでは、障害のある人に対して「大変そう」という思いから妙な気遣いをしていたのですが、障害のない人と同じように接した方がいいという考えになりましたね。もちろん、皆さんいろんな困難に直面されたと思いますが、それをしっかり乗り越えられてきたんでしょうね。とにかく明るくて前向きで。そういう姿を見ていると、ちっちゃなことでくよくよするのがバカらしくなりましたね。 障スポ&サポートに登録させていただきました。

障害のある人への見方が変わったことで、普段の生活にも影響はありました?

 障害のある人に声をかけやすくなったと思います。以前、坂道を上がれなくて立往生している障害のある人を見かけたことがあるのですが、私を含め誰もすぐに声をかけられなかったんです。でも今は、すぐに「お手伝いしましょうか」と言えますし、困っている方を見つけやすくなったとも思います。ついこの間も、電車に乗ってきた視覚障害のある人が空席を見つけられなくて困っていたのですが、誰よりも先に気づくことができました。

障害者スポーツのボランティアに興味はあっても、自分に務まるのか自信がなくて応募を迷っている方は多いと思います。そのような方々の背中を押すとしたら、どんな言葉をかけますか?

 まずは、「そんなに構えなくても大丈夫」と言いたいです。現場には専門知識のあるスタッフがいらっしゃって、事前にしっかり説明してくださいますし、困りごとが生じたら相談にも乗ってくださいます。一人に重い責任を負わせることもありませんので、安心してほしいですね。現場は障害のある人もない人も分け隔てなく一体になれる雰囲気があるので、誰にも気兼ねすることなく楽しい時間が過ごせると思います。興味のあるスポーツ種目に参加すると、より楽しめるでしょう。とにかく、迷っている時間がもったいないです。

趙さん自身は、今後どのようにボランティア活動を続けていこうと思いますか?

 できる限り長く続けたいので、心身ともに無理するようなことは避けようと思っています。やはり、楽しいという気持ちがないと続けられませんから。そうやって自分が楽しんでいる中で誰かの役に立てたとしたら、それはご褒美だと思うようにしています。

趙さんが思う障害者スポーツおよびボランティアの魅力はどんなところですか?

 その場にいると幸せな気持ちになれるのが素晴らしいなと思います。ある障害者スポーツのイベントで、重度の障害のあるお子さんとそのお母さんをお見かけしたことがあるのですが、お二人とも楽しそうにされていたのが強く印象に残っています。おそらく、日常生活では親子でスポーツを楽しむ機会がないのでしょうね。イベントだとサポートする人もいますし、補助器具も揃っていますから、安心してスポーツに挑戦できる。そうやって楽しそうにしている姿を見て、私自身もすごく幸せな気持ちになりました。これがあるから、イベントへの参加やボランティアへの応募が止められないのでしょうね。今のところ、障害者スポーツのイベントに行くと障害のない人の参加が目立つのですが、今後は障害のある人の参加が増えるといいですね。そうやって、もっともっと幸せを感じられたらいいなと思います。

【インタビューを終えて】

 車いすテニス・車いすバスケットボール・車いすラグビー・ブラインドサッカー・ゴールボールをはじめ、様々な障害者スポーツにチャレンジしてきたという趙さん。講習会では仲間をサポートしながらプレーすることの難しさを経験したようで、障害者スポーツへの関心がさらに高まったご様子でした。そんな趙さんが、今、最も関心があるのがチェアスキーなどのウィンタースポーツで、VR(※)で体験したら楽しくて実際にやりたくなったとのことでした。これからも持ち前の好奇心とチャレンジ精神で、どんどん活躍の場を広げていかれることでしょう。

※VR……「Virtual Reality」の略で、「人工現実感」や「仮想現実」と訳されます。立体感のある映像や音声に加え、触覚、温度感覚などの体性感覚を刺激する機材を用いて、実体験に近い体験を生み出します。