障害者スポーツボランティアとは

2022.02.08公開
興味があるならひとまず参加してみる。考えすぎないことが大事です
仲井 昭伸さん
初級パラスポーツ指導員

 ボランティア活動にご興味のある方に向けて、先輩ボランティアの方々の活動への想いや実際の活動内容とともに、魅力をお伝えします。

 今回は、日頃から精力的にボランティア活動に参加されている仲井昭伸(なかい あきのぶ)さんに、やりがいや楽しみ、自分なりの向き合い方をお聞きしました。

仲井さんは普段、どのようなボランティア活動に参加されていますか?

 自宅の近くに東京都障害者総合スポーツセンターがあるので、そこで開催されるスポーツ教室やイベントに参加することが多いですね。あとは、東京都スポーツ文化事業団が主催している特別支援学校での体験教室にもボランティアとして参加したことがあります。現場では備品の準備や危険な場所のチェック、来場者の案内といった業務をサポートすることが多いです。また、コロナ禍になってからは、消毒作業のお手伝いをすることもあります。

障害者スポーツ関連のボランティアが多いのでしょうか?

 そうですね。ボランティア活動を始めたのは8年くらい前ですが、その頃から障害者スポーツイベントに参加しています。

ボランティア活動をやってみようと思った理由を教えてください。

 正直に言わせていただくと、ヒマだったからです(笑)。58歳の時に身体を壊して早期退職し、家でゆっくり療養していたのですが、しばらく経つと平坦な毎日に飽きてしまったんです。家族以外の人や社会との接点がなくなるので、その時は自分が世間から引き離されているような感じがしました。そこで水泳、太極拳、ボイストレーニング、版画など自治体が主催するスポーツ教室やカルチャー教室に通ってみたのですが、結局どれも続きませんでした。そんな中、30年近く続けていた囲碁を打つ場所も閉鎖になってしまいまして。いよいよやることがなくなった頃、障害者スポーツのボランティアの募集があることを知って参加してみました。嫌だったら辞めればいいかなと、本当に軽い気持ちでしたね。

そこからボランティア活動を約8年も続けてこられたのはなぜでしょう?

 初めて参加した時からそうですが、スタッフや先輩ボランティアの方々がとても親切で居心地が良いですし、障害のある方々との触れ合いも楽しいからでしょうね。

 恥ずかしながら、ボランティアを始める前は障害のある方に対して「気の毒」「かわいそう」といったネガティブなイメージを持っていたのですが、実際に接してみると考えが180度変わりました。皆さんしっかり自立されていたり、これから自立しようと頑張っていたりと、とにかく前向きなんです。私はこれまで誤った見方をしていたのだと、反省しました。

障害のある方との交流をどのように楽しんでますか?

 応援団のつもりでよく声援を送っています。また、競技や体操を一緒にやることもあります。バットをボールに当てても勢いなく転がるだけだったり、体操をしても数㎝しか腕が上がらなかったり。健常者の世界では取り立てて言うことではないかもしれませんが、障害のある方にとってはそれが大きな成果で、その喜びを満面の笑みで表現する姿を見ていると自分も嬉しくなります。その嬉しい気分のまま家で飲むビールがこれまた最高にうまいんですね(笑)。だから辞められないのでしょう。

ボランティア活動で大変だったことはありますか?

 あまりないですね。とにかく楽しもうと思って参加しているので、自分が無理をしなければいけないものは選ばないようにしています。ただ、ボランティア経験を通して自分の中で常に心掛けるようになったことが三つあります。

具体的にどのようなことを心掛けていますか?

 一つ目が「安全」です。これは私自身の苦い経験ですが、指示通りに備品を運ばなかったせいで肩を打撲してしまい、2~3週間痛い思いをしたことがありました。私以外の人に何かあったとしたらもっと気分が落ち込むでしょうから、安全には細心の注意を払っています。二つ目は、障害のある方に対して必要以上に世話を焼かないこと。当初は車いすを押したり荷物を持ったりと、先回りしてお手伝いしていたのですが、自立しようと頑張っていらっしゃる参加者が多いので、私の行為はただのおせっかいということに気がつきました。頼まれたらやる、困っている様子だったら声を掛ける……とにかく相手の意向を聞いてから動くようにしています。三つ目は、自分自身もその場を楽しむということ。でないと嫌になって続かないでしょう。自分のできることを、自分のできる範囲で、自分の方法で無理しないように、という姿勢が良いと思っています。

ちなみに、仲井さんは何を基準に参加先を選んでいますか?

 障害者スポーツの種目、稼働する時間帯、自宅からの距離ですね。種目に関しては自分がやってみて楽しかったものをよくリピートしています。例えば、ティーボール、フライングディスク、ボッチャ、室内テニスなどですね。また、朝早い時間に家を出なければいない現場や、移動時間が長い現場は選ばないようにしています。やはり、無理なく続けることが大事だと思っていますので。

これからボランティアを始められる方に向けて、どんなことを伝えたいですか?

 ボランティアに参加される方の中には、「社会に貢献したい」「仕事の役に立つ経験を積んでおきたい」といった明確な目的を持っていらっしゃる方もいますが、私のように純粋に自分の楽しみのために参加されても良いのではないかと思います。やってみて肌に合わないなら、また違うことをすれば良いですし。

 ちなみに、ボランティア仲間も良い方ばかりです。それは性格というよりも、利害関係がない分お互いに良い距離が保てるからでしょう。コミュニケーションを強制されることもありませんから、人付き合いが苦手な方も居心地良く感じられると思います。もちろん、社交好きな方もいらっしゃいますので、気の合う方が見つかったら交流を楽しまれてもいいでしょう。とにかく、やる前から考えすぎないことが大事ですね。興味があればひとまず参加されることをお勧めします。

〈インタビューを終えて〉

 「70歳を過ぎても常に新しい発見があること。そして、その発見を通して自分が変わっていくことを実感できるのが嬉しい」と満面の笑みで話してくださった仲井さん。ボランティア活動を心から楽しまれていることがひしひしと伝わってきました。とにかく肩の力を抜くこと──屈託なくお話しされる仲井さんを見ていて、継続するコツはそこにあるのだと感じました。